彼と愛のレベル上げ
話が盛り上がってとっぷりと日が暮れてしまった頃に、はじめて時間を気にした蜜柑子おばさん。


「あら、たいへん。もうこんな時間。私ったらすっかり長居してしまって」

「いえいえ、こちらもいつまでもお引き留めして。また凛子さんといらして?」

「いいんですか?」

「ええ、もちろん」


あ、なんだろ。
すっかり同世代の友達みたいに仲良くなっている三人に軽く疎外感。


「もちろん桃華ちゃんも、ね?」


そんな私に気づいたお婆様は、可愛らしくそう付け加えてくれた。

そして主任の方に向き直ると、


「今日は仕方ないから、純哉に桃華ちゃん貸してあげるから」

「それはありがたいですね、富貴子さん」


富貴子さんの憎まれ口にも全く動じない主任。

この二人、ほんと似てるって言うか。

まぁ主任のお婆様なんだから、当たり前なのかもしれないけど。


「次はきちんとエプロン持参しますね」

「ええ、楽しみにしているわ。蜜柑子さんも都合のいい時は是非」


あぁこれは、もう絶対次からは三人だな、なんて思いながら。






駅に車を停めてきたという潤兄がお母さんも家まで送ってくれるという。私たちは玄関まで見送り、次はいつにしようかと話をしていた時、


「相良さん、今度一緒に食事でもいかがですか?モモの引っ越しの手伝いをしていただいたお礼もまだですし」


急にそんなことを言いだした主任。

しかもニッコリと笑っている。とはいえ、目が笑ってないから隣にいる私はハラハラ。


「是非」


そう言って主任に挑むように見ている潤兄。

そんな態度だからなんか言い返すかと思ったけど、答えだけは大人な対応。



でもなんか不穏な空気。

さっき二人は笑って話してたじゃない?

しかも和んでたじゃん……

それって気のせい、だった?


「モモ、予定調整しておいてください」


社交辞令、じゃなくて?

本気?ですか?主任。


「え、あ。はい」

「楽しみにしてます。それでは」


パタンとドアが閉まってほっと一息。




あぁなんだったんだろ、今の時間。

すっごい疲れた。

そんな私たち三人のやり取りにはお母さんたちは気が付かなかったようだから、ちょっとホッとした。
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