彼と愛のレベル上げ
沈黙の時間がすべてを物語ってしまった。


「……やはり、そうですか」


その声の様子に顔を上げると、驚いた風もなく思った通りだという顔をした主任と視線があった。


さっきのちょっとした態度で気づいてしまった?

それとも私の態度が何かおかしかったとか?

気付いてしまった原因をじっと主任の眼をみて読み解こうとするけれど、私には全くわからない。

主任のまっすぐ見つめられた目に耐えきれなくて目をそらすと、


「何があったか話してください」


静かにそう続けた主任。

何があったか……

それを話すためには私の中の醜い心の部分にも触れないといけない。


「でも、」

「何を聞いても怒りませんから」


怒るっていうか
あきれるっていうか

……私の事嫌いになっちゃうかも、しれないのに


「……」

「モモ?」


繋がれた手にさらに手を重ねられてビクッとなる。


「あの―――


主任から電話があったあの日。

潤兄と会っていてそのあとあった事を順を追って話していった。


さすがに抱きしめられたとは言えなかったけど、「俺なら泣かせない」と言われた事も「本気だから」と言われた事も正直に話した。

その瞬間は握りしめている手が少しきつくなったけど、最後まで黙って聞いてくれていた。


「それでモモ、返事は?」


望亜奈さんと同じ聞き方をする主任に、


「あの、でもそれって問われたわけじゃないので答えと言われても」


だんだんと声が小さくなってしまう私。

だって、この話しした時、望亜奈さんにものすごく怒られた。


「では、聞き方を変えます。そう言われた時にどう思いましたか?」


どう思ったか?

私は……この手を繋いでいたい。

例え泣く事になっても。


「私は。ジュンさんじゃなきゃイヤなんです…」


それにまだ私は自分に自信を持てるようになってない。


「それで、ジュンさんの隣にいても似合う人になりたいんです」

「ん?」

「でも自信がなくて。…でも、頑張りますから」



あきらめたくない。

隣にいる事を夢見ていたあの頃とは違う。

主任と並んでもお似合いだと言われるような人になりたい。



「モモ?」

「だから…
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