彼と愛のレベル上げ
なんとか主任の腕をすり抜けて、浴室へ向かった私。

今日はさすがに一時間も湯船につかってるわけにはいかない。

頭を洗いながらも、思い出すのは……


主任のご両親会う事や
お婆様の言ってくれた嬉しい言葉
主任の言ってくれた『ずっと離さない』という言葉


そんなことを考えつつも私の中の一番のスピードでお風呂に入り、あがったのは三十分後。

ゆったりするはずの時間のバスタイムが、なぜか疲労困憊。

バスタオルを巻いたまま脱衣所の椅子で少し休憩していると、


「モモ、大丈夫ですか?」


うわ。
こんな格好をしてるところを主任に見られたら格好の餌食……

私は慌てて、「あのっ大丈夫ですから」と言って入ってこようとする主任をけん制する。

なんで主任は一緒にお風呂に入りたがるのか。

いや、入りたがるというか世話を焼きたがる?

なんというか、まるでこまごまと世話をする召使いみたいな感じ?


「あがったらすぐに食事にしますよ」

「わかりました」


何から何まで用意周到。

私が寝ている間にすべて準備をすませてくれていたみたい。

本当は私が甲斐甲斐しく世話を焼いてみたいんだけどな。


ドライヤーで髪を乾かしながら、またさっきの思考にとらわれる。


主任のご両親に気に入ってもらえるのか?

主任はほんとに私でいいのか?


急いでキッチンに向かうと思った通りきちんと準備がされていた。

私が席に着くと「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。


今日のメニューは純和風。

お魚の煮付けと煮物、たき込みご飯、お浸しと和え物。

こういう何気ないメニューが作れるようになりたい。


「富貴子さんのお料理はやっぱりおいしいですね」

「…まぁ、普通ですね」


普通。
これが普通って言って……


「私もこういうのが普通に作れるようになりたいですっ」

「はは、だったら月に一度とは言わず、近所なんですから早い日は富貴子さんのところで夕食を一緒に作ったらいいですよ」

「え、…」

「うちの味。モモが早く覚えてくれると嬉しいですしね?」


そんな風に言ってくれるのは嬉しいけれど、


「いいんですかね?」

「明日、富貴子さんの所に行って聞いてみましょう」


あ、なんかそういうのって花嫁修業っていうのかな?
なんとなく周りがどんどん進んでいく気がする。
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