彼と愛のレベル上げ

     *****



今日も仕事帰りにお婆様の家に帰ってきた。


「ただいまです」

『桃華ちゃん、おかえりなさい』

「あの、富貴子さん。今度のお料理会の日なんですけど……


ご挨拶に行く日が延期になった事を伝える。

だけど、お婆様は全く動じずに、


「あら、でも純哉には会いに行くのでしょう?」

「え、」

「あーはい。…たぶん」

「それなら、お買物は行きましょうね?」

「え、」

「だって、可愛い桃華ちゃんを見てもらった方がいいでしょう?」


微笑みながら言うお婆様の意味がわからなくて戸惑う。


「でも、」

「それにね、うちは孫が男しかいないのよ。つまらないわよねー」

「え?そうなんですか?」


孫が男しかいない。
てことは孫は主任だけじゃないってことだよね?

そういえば、主任の家族構成について聞いたことがない。
お婆様の話の中にも主任しか出てこないから一人っ子だと思ってたけど。


「あの、富貴子さんてお子さんは何人なんですか?」

「残念ながら娘が一人よ」

「…つかぬ事をうかがいますがジュンさんて一人っ子じゃないんですか?」

「え?!」


目を見開いて驚いているお婆様。
やっぱり、今さらな質問ですよね……


「純哉から聞いてないの?」

「あまり、ジュンさんはご家族の事話したがらないので」

「そう……」


お婆様は少し寂しそうに目を伏せた後、こちらを見て


「純哉は長男よ。一つ下の弟がいるわ」

「え?!弟さんですか?」

「でも、あまり一緒には住んでないかもしれないわね。あの二人は」

「そう、なんですか……」


なんとなく踏み込めない感じで。

主任の弟の話しなんて聞いたこともない。
それに主任のご家族は東京にいるのに主任は一緒に住んではいない。

なんだろう。
家庭の事情っていうのがあるのかもしれないけど、こういうのって聞いてもいいもの?


「もっとも男兄弟なんてあまり仲いいものじゃないのかもしれないわね」

「私は一人っ子なので兄弟とか憧れますけどね」

「あら、桃華ちゃん。この前いらした蜜柑子さんの息子さんと兄妹みたいだったわよ?」

「え、」


それは……
出来たらあまり触れたくない話題なんだけどな
< 142 / 240 >

この作品をシェア

pagetop