彼と愛のレベル上げ
「桃ちゃん?」
さっきまで普通に食べてたのに、ピタリと手を止めて私を見ている。
その目線の先は……
ガシッと左手を捕まれ、しげしげと見られる。
「こういうのって、大概男の人が選ぶとあれなのに、これは……主任センスもいいのね。つくづく嫌みだわ」
私のリングはピンクゴールドで誕生石が埋め込まれている。
主任のは、プラチナで一見するとペアリングだとは気づかない。
「これはもう、主任は本気だしてくるね?」
本気を出す?
これ以上本気出されたら困りますけど。
「そんな……
「相良さんの存在も主任にはいい刺激になってるみたいだし?」
刺激っていうか、
そうだった、まだあの問題が……
「それなんですけど、この前潤にぃに会ったときに。なんでそうなったのかわかんないんですけど、潤にぃに一緒にお食事でもどうですかって主任が言い出して、」
「へー」
って、そんな
「楽しそうね?」
顔をあげて次に言ったのはそんな言葉。
いや、だから。楽しくないって。
ていうか、どこに楽しい要素があるんですか?
「望亜奈さん、人事だと思ってるでしょう?」
「うん」
満面の笑みでそう答えた望亜奈さん。
そうですか…
そんなもんですよね…
「あ、でも私は桃ちゃんの味方だよ?」
「…その場にいないなら味方も何もないですけど…」
「そうだけどね、相良さんにも祝福して欲しいでしょ?結婚」
もちろん。
だって潤兄は私の大切な家族みたいな、お兄ちゃんみたいな存在だから。
「はい……」
「だったら、これも桃ちゃんに与えられた試練じゃない?」
「試練、ですか?」
そんな大げさな。
でも、潤兄にもわかってもらえたら嬉しい。
「それを乗り越えないとね」
「はい、…あ、ていうか、、結婚して欲しいって言われてないですからね?私」
「はいはい、そう言う事にしておいてあげるけど」
全然取り合ってくれない望亜奈さん。
「だってそうなんですってば」
「まぁ主任もなんか考えてるんだろうから、私からはもう何も言わないけどね」
「……」
「ほら、戻るわよ、休憩時間終わっちゃう」
「え、私半分も……」
結局ずっと話をしていた私は、ランチの半分も食べる事が出来ずにそのまま望亜奈さんに引きずられるようにしてお店を出た。