彼と愛のレベル上げ
お店に行くと仕事帰りの潤兄がいて望亜奈さんと話をしていた。

他にお客様もいないので、望亜奈さんが相手をしていてくれたみたいだった。


「お待たせしました」


一応、職場と言う事で丁寧な言葉をかけてみる。


「あ、桃ちゃん。相良さんと待ち合わせしてたなら言っておいてくれればいいのに」


いえいえ、全然待ち合わせなんてしてないし。

それに待ち合わせするならこんなとこでしないですよ?

以前、潤兄がここを訪ねてきて他のスタッフの人から散々色々聞かれて大変だった事を思い出す。


「潤にぃ、五分だけ待って。仕事終わらせてくるから」


私はそれだけ言うとそのまま回れ右をして事務所の方へ戻ろうとしていたら

後ろから望亜奈さんの事が聞こえる。


「じゃあ外は寒いし、相良さん中で待っててくださいね」

「あーいや、外でたばこ吸っとく」


潤兄のそういう声が聞こえて、振り返ってみたらどうやらお店の外に出たようだった。


私は望亜奈さんの所に戻り耳元で、


「潤にぃにメールもしてないし約束もしてないんですけど、あの…あれって怒ってる感じですか?」


おそるおそる聞く私に、


「全く怒ってる感じはしなかったよ?心配して顔見に来ただけじゃない?」


それにしても、メールくれるとかすればいいのに。

そういうところは全く変わんないんだから。


「そうですか、あ。すみませんありがとうございました。ダッシュで仕事終わらせて帰りますね」

「はーい。主任にもよろしくね」


みんなに聞かれるわけにもいかないのでコソコソと二人で話す。

私の左手の薬指にたまに視線を感じるから、そのうち誰かに問い詰められるのかもしれないけど、どうせバレるわけないから今は内緒。


席に戻り残っていた書類を片付けると担当営業に報告をいれPCの電源を落とした。

そしてロッカーで私服に着替え、コートを掴んで外に出る。



「潤にぃ、ごめん、おまたせ」

「桃、本当に五分だな」


ちらりと腕時計を見て言う潤兄。

怒ってる感じは今の所、ない。
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