彼と愛のレベル上げ


「メシでも食いに行くか?」


もちろんご飯をゆっくり食べている時間はない。


「あ、っと……」


でも潤兄に謝らなきゃいけないし、わざわざ会いに来てくれたってことはなんか用事があるんだよね?

私が言葉選びに迷っていると潤兄は、


「これから約束だったか?」

「えと……ね」


ハッキリしない私に少しイライラしだした潤兄。

潤兄こういうの一番嫌うのはわかってるんだけど、


「用事があるなら帰るよ」


しびれを切らした潤兄に、やっと答えを見つけた私は、


「え、待って。あのっ、お茶でもいいかな?」


心配して会いに来てくれた潤兄に対して、この場でおわびとお礼ってわけにはいかない。

お茶なら三十分ぐらいで済むだろうし、これから出かけるって言えばきっと大丈夫だろうし。


「別に急ぎの用じゃないから今日じゃなくても」


いや、そうなのかもしれないけど。

でも、なんとなくこのままにしておくのも嫌だ。


「だって、潤にぃ。おとといお迎え来てくれたって…」


潤兄とはいつまでもギクシャクした関係でいたくない。

本音を言えば、この前潤兄が言った事も「どうかしてた」なんて笑って訂正してくれないかと願ってる。


「あぁ気にすんな。ちょうど仕事がその時間に終わったから行ってみただけだから」


そうだ。
いつだって潤兄はこういう言い方をしていた。


でもそんなの、きっと嘘。
いつもその日はきちんと間に合うように迎えに来てくれてたから。
なのになんであの日は潤兄が来ないと思ったんだろう、私。


「でもっ、」


縋るように言葉を続けようとした私に潤兄は軽く笑みを浮かべて、


「とりあえず、駅前のあそこでいいか?」

「うん」


私の気持ちを読み取ってくれたのか、お茶をする気分にはなってくれたのか。


料理教室の帰りによく立ち寄るコーヒーショップ。

そこまでは五分とかからないけど、無言のまま歩く二人。

店について、コーヒーを買って席に着く。


…………


ちょっと、潤兄。

なんかしゃべってよ……
< 153 / 240 >

この作品をシェア

pagetop