彼と愛のレベル上げ


「え?」

「だから、送ってく。」

「はい?あの、近所のジュンさんの家じゃないよ?」

「バカだろ?桃。あれはおまえん家だろ?」

「そう、だけど」

「これから用事もないし、」

「でも、……



送ってくもなにも。

電車に乗ったらとりあえず東京までは連れてってくれるし。

だいたい送るってことは帰るってことで。

それだけのために電車賃かけて東京まで行くって言ってるの?


「電車。何時のだ?」

「あ、えと。まだ決めてなくて。一人なら取れるから乗れたのって感じで…」

「今なら八時のいけるな。ほら行くぞ。桃」

「荷物家だし、ていうか。潤にぃ?」


私の飲みかけのカップを持つと席を立ち、出口に向かう潤兄。

私の言った事の半分も聞いてない。

それに行くって?

行くって東京に?


「潤にぃ、待って……」


慌てて席を立ち荷物を持って潤兄を追うように店を出る。


出口で潤兄は待っていてくれてたけど。


「準備はしてあんのか?」

「あー、うん。玄関に置いてあるけど…」

「そか、じゃあとりあえず桃ん家帰るぞ」


帰るぞって。
家まで送ってくれるわけでも、駅まで送ってくれるわけでもなくて。

東京の主任の家まで送るって言ってるの?

本気で?


「あの、だから潤にぃ?」

「なんだよ、いいから歩け」


足の長い潤兄と違って、私は一生懸命早歩きしても遅れてきて時々小走りになる。

歩くことに一生懸命で、潤兄と話をするのもままならない。

…潤兄の足なら三分ぐらいで家まで着くんじゃないの?ってスピード。


そしてマンションのエントランスに着いた時には息も上がってた。

寒いはずなのにうっすら汗も浮かんできてる。


「ここで待ってるから取ってこいよ、荷物。」

「え?ダメだよ、ここじゃ寒いし」


何でここで待つなんて言うのかな?


「じゃ、玄関の前までな」

「なにそれ。余計怪しいから」


潤兄の腕を引っ張るようにしてマンションに入りエレベーターに乗る。


「いいから早く」


十五階を押し、扉が閉まった。


動き出すエレベーター
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