彼と愛のレベル上げ
納得のいかないまま、さっき買ったお茶とお弁当を潤兄に渡す。

「さんきゅ」と言って受け取り、潤兄は食べ始めた。

しばらくそれを見ていたけれど、主任にする話の内容を教えてくれそうにない。

「潤にぃ、お弁当おいしい?」そう聞けば普通に答えてくれるのに。






「着いたら起してやるから。桃、寝とけ」

「え、でも…」

「今週ずっと忙しかったんだろ?ずっと残業続きだったってさっき聞いたよ」


あぁ望亜奈さんと話してたから、その時に聞いたのかな?

迎えに来てくれたときに理由を伝えられなかったままに帰ってしまった潤兄を、望亜奈さん心配してたっけ。


「…うん。キャンペーン始まったばかりだからね」

「桃も仕事頑張ってんだな」

「頑張るって言っても私は営業補佐だから実際頑張ってるのは営業さんなんだけどね?」

「でも本社での会議とかも行ったんだろ?」


あれ?その話、潤兄にしたっけ?

もしかしてあの時も潤兄の前で泣いたりしたんだっけ…

なぜか情緒不安定な時、潤兄の前で泣いたりするから心配させちゃうんだよね、きっと。


「あぁ、うん。それは順番が回ってきた感じ」


営業は確かに順番が回ってくるけど、営業補佐までは今まで出席してなかった気がするんだけどね。

もしかしたら私が入社する前はそうだったのかもしれないけど。


「ふぅーん。まぁなんにしろ桃も立派な社会人ってことだな」


立派かどうかは謎だけど。

一応、三年目だし、大体の仕事は掴めてきたけど……

今回のキャンペーンで身をもって体験してる。

まだまだだって……。


「やっとちょっとわかってきたぐらいのひよっこだけどね」


ハハッって笑って答える私に潤兄は、


「そう言えるってことは、逆にわかってきてるってことなんだろうな」

「そう、なのかな?」


そうだといいな。

主任に追いつくなんて言うのは無理だけど

主任のように仕事のできる人になりたいと思う。

詰まんなかった仕事も大変な事もたくさんあるけど、その中に楽しいって思える事もあるって事が少しずつ分かってきた。


「まだ一時間以上あるから、寝とけ。眠そうな目してるぞ」


う。
そう言えばおなかいっぱいになって眠くなってきた気がする。
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