彼と愛のレベル上げ
一週間の疲れがピークだったのか、潤兄の言うように眠くなってきた。


「ん、ごめ…ちょっと寝てもいいかな?」

「おう、寝ろ寝ろ」


そう言われて安心して目を閉じる。




「……桃。ほんとは行かせたくないのに、な」



聞こえてきた呟きは夢だったのか、現実だったのか……





     *****



「…桃、着くぞ」

「ん。」


夢も見ずにぐっすりを寝ていたらしい。

ずっと同じ体勢で寝ていたからか、体が固まってる。

軽くストレッチしていると、だんだんとノーミソも起きてきた。


「潤にぃ、ありがと…」


お礼を言ったものの、これから潤兄と一緒に主任の家に行かないといけないんだった……


メール、なんて打ったんだろ。

乗った電車の時刻は伝えたと言ってた。

でも、それ以外は?

大体それを伝えたあとに主任からの返事がきっと来てるはずで…


「潤にぃ、カバン取ってもらっていい?」

「あ?もう着くから。ほら、コートとかちゃんと着とけよ」

「え?」


気付けばもうすぐ到着するアナウンスも聞こえている。

周りの人たちも立ち上がって出口の方に向かってる。

私も慌ててコートを着て降りる準備をした。

そして電車はホームに入っていき、東京駅に到着した。


「桃。降りるぞ」


それと同時に渡してくれたカバン。

だけど、今は携帯を見れる状況じゃない。


「あ、うん」


そのまま潤兄について電車を降りた。

横を歩きながら、チラチラと見るけど相変わらず潤兄は前を見て歩いているだけ。


なんか変。

確かにいつも話し聞かないのは一緒だけど。

今日のは特に。

…なんていうか、聞く耳持ちません。みたいな?


潤兄に気を取られたまま、私は自動改札を抜けた。



すると、ピタリと立ち止まった潤兄。


「潤にぃ、どうしたの?」


横から見上げるようにして潤兄に声をかけると一点を凝視している?


ハッとなって前を見ると、そこには難しい顔で主任が立っていた。


「…え?」


なんで?

ここに主任がいるの?
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