彼と愛のレベル上げ
ジュンさんはお店の方に声をかけると、席に案内された。


「モモは少し見てからにしますか?」


何を?

だってここ、普段つけるアクセサリーとかじゃないですよ?

それに桁がおかしい。


「あぁ、でも準備していただいたので見てからでもいいですね」


そう言って、ジュンさんは席に向かってしまった。

私もそれについて席に向かう。


「お待たせいたしました堂地様」


恭しく手袋をしてリングをいくつか乗せたトレイを見せてくれる店員さん。

そこに並んでいたのはどこからどう見ても婚約指輪。


「モモがどういうのがいいかわからなくてとりあえずオーソドックスなものを選んでもらったんですが」

「え、あの。でも…」

「聞いていた通りに可愛らしい方ですね。それに指もほっそりしてますね」


そう言って微笑んで私の手を見ている店員さん。

まさかジュエリー店に来るだなんて思いもしないから、短く切りそろえナチュラルな色のマニュキュアを塗っただけの爪。

あぁわかってればせめてネイルサロン行ったのに。

て、そうじゃなくて。。




助けを求めるようにジュンさんの目を見て訴える。

この状況を説明して、と。


「モモを驚かせようと婚約指輪を見に来たんですが全く分からなくて」


ふふって微笑んでいる店員さん。


「その時に年齢と雰囲気を伝えたんですが自分は全くどれがいいかわからず、担当してくれた彼女に選んでいただいたんです」

「一生のものですし、好みも色々ですから…」


まって。

今ここで、…婚約指輪を選べということ?




えと?

……私が?


「サイズは九号でご用意させていただいてましたがそれでは大きそうですね」

「モモ、とりあえずしてみて?」

「えと、」


手袋した手でひとつリングを渡してくれた。


さっきちらっと見たそれより明らかに大きそうですけど?

それに見えた金額が……


おそるおそるはめてみる。


サイズはもちろん大きいけど、なにより子供みたいな小さな手にこの石は大きすぎる気がする。

なんというか、こぼれ落ちそう……


「んーモモには大きすぎましたか…」


いや、そういう事じゃなくてね?ジュンさん
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