彼と愛のレベル上げ
ともかく説明して欲しくて、このままでは押し切られてしまいそうで。


「あの、むこうのも見せていただいていいですか?」


そう言って強引にジュンさんを引っ張ってその席から移動させる。

どこのガラスケースの前だろうと良くて、ともかく店員さんから逃れた場所でジュンさんを問い詰めたかった。


「ジュンさんっどういうことですかっ」

「ん?婚約指輪をモモに選んでもらおうと思って?」


いやいやそう言う事は先に言ってください。

ていうか婚約指輪の意味知ってますよね?


「年が明けたらうちの両親にも形式上ですが挨拶してもらわないといけないので、こういうものは早く手配しておかないと間に合いませんから」

「でも……


私、ご挨拶はする約束はしましたけど、婚約ってことは結婚の約束正式にしちゃうんですよ?

というかプロポーズされてませんし!


「モモには何度も確認しましたよ?結婚の意思もこの先一緒に暮らしていくことも」


は?!いつ?どこで?

しかも何当たり前のように言って呆れたような顔をしてるんですか?


「モモと結婚する事に決めました。だから婚約指輪を選ぶんです。何かそこに間違いがありますか?」


いや、だからっ結婚する事に決めましたって何?!

プロポーズされてないですってば。


「だって…」

「わかりました。では、今日は下見でいいです。色々見せていただきましょう」


そう言うジュンさんに納得してないけど、とりあえずこの場を逃げ出すわけにもいかない。


「…はい」



そして席に戻った私たちはまだ挙式の日取りも決まってなく、急いでいない事を伝えた。私が離れた所に住んでいる事もあって来年また見せていただく事でその場を収めた。



お店を出て、お茶をしようとコーヒーショップに入る。

席についてコーヒーを一口飲んだあとで、


「ジュンさん!あういうお店に行くなら行くって言ってください」

「なぜ、ですか?」

「大体婚約指輪なんて大事なもの……」


そこまで言って下を向いてしまった私。

『プロポーズされてない』

そんな事言ったら、まるでプロポーズしてくださいって言ってるようなもの。

だから言えなくて…


「モモ?怒りましたか?」

「…怒ってないです」

「では、何をすねてるんですか?」

「拗ねてなんかっ…」
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