彼と愛のレベル上げ
待ち合わせ場所に着くとすでに潤兄は来ていた。

柱にもたれかかりどこか遠くを見ているような眼差し。

時折女の子が振り返ったりしているのが見える。

きっと潤兄はこういうの慣れてるんだろうな。

特に気にしていない、いや目に入れてない様子の潤兄。


「彼は色んな意味で目立ちますね」

「…そう、ですね。昔からあんな感じでした」


色んな意味で目立つ。

それは顔立ちだけの事を言っているのではない事がわかった。



ジュンさんも綺麗な顔立ちをしている。

けれどジュンさんはメガネや醸し出す雰囲気で近寄りがたいオーラが出ていた。一言でいえば仕事のできるビジネスマン風?


それに比べて潤兄は印象的な強い目元で、時折少年のように笑うその笑顔が魅力的に映る。

細身のスーツを綺麗に着こなしてスタイルのよさをさらに引き立てている。



幼いころの潤兄は整った顔立ちのせいか今のような男らしさもなく中性的な雰囲気を醸し出していた。

それでも私にとっては初めて意識した異性だったからいつの間にか恋心を抱いていた。


――初恋の人は確かに潤兄だった。


そう懐かしく思い返しているとジュンさんは、


「なんだか妬けますね。その頃のモモを知ってるんですよね、彼は」


確かにそうだけど。でも、


「…これからはジュンさんが私を見ていてくれるんですよね?」

「いつのまにモモはそう言う言葉が言えるようになったんですか?」


へ?
いや、だって別に一緒にこれから歩いて行くのはジュンさんだって思ったからで。

そういうって、どういう?!


「あの?」


ジュンさんは繋いでいた手にきゅっと力を込めると


「いえ、彼が待ってます。行きましょう」


そう言って歩き出した。


潤兄はジュンさんに何を話すつもりだろう?

そしてジュンさんはどうやって潤兄と打ち解けようと思ってるんだろう?




手を繋いだまま潤兄に近付いていく私たち。

それに気がついた潤兄は私を見て目を細めるとジュンさんに会釈をした。


…どうやら臨戦態勢ではないらしい


そんな潤兄にほっとした私は、


「潤にぃ、おまたせ」


いつものように声をかけた。
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