彼と愛のレベル上げ
「少し、寝ておけ」
結局何も言えないまま、潤兄の言葉に頷くしかなかった。
だけど、目を閉じてもさっき潤兄が言った言葉が私の中で渦を巻く。
『何で迎えに来ないのか』
『プロポーズもされてない』
ずっとずっと。自分の中でも思っていた事。
わかっていたけど、潤兄に口に出して言われるとあまりの衝撃の大きさに打ちのめされる。
眠くなかったはずなのに、あまりの衝撃の大きさになのか寝不足なのか意識も段々と薄らいでいく。
「桃。…俺の手から離れていくなよ……」
潤兄の声が聞こえたような気がしたのは夢だったのか……
*****
「桃、そろそろ着くぞ」
「ん?あ、潤にぃ……」
「桃はいつまでも子供みたいだな、ヨダレ垂らして寝てたぞ」
「え?!」
慌てて自分の口元を拭う私。
そんな私の様子を見て潤兄は、
「ハハ、冗談。」
意地悪な笑みを浮かべて言う。
あ、いつもの潤兄だ。
カバンを棚から下ろすと、潤兄は「家まで送ってくから」と言って微笑んだ。
「すぐ近くだし大丈夫だよ。それより急にお休みつぶしちゃったんだから早く帰った方が――」
「いいから、桃は黙って送られとけ」
送られとけっていう言い方が潤兄っぽい。
そんな言い方だけど、やっぱり根は優しいんだよね潤兄。
駅からの帰り道。ずいぶんと近くなった我が家までは十分とかからず、やっぱり潤兄に送ってもらうまでもない距離。
マンションが見えてきて潤兄に、「もう、ここで大丈夫だから」と言うと、
「あー桃ん家でコーヒー飲んでもいいか?」
珍しい。
潤兄が自ら進んであの家に上がるなんて事は今まで一度もなかったから私は嬉しくなって、「もちろん」と答えた。
マンションにつき、鍵を開け部屋に入る。
「どうぞ」と言って潤兄を部屋に招き入れると、すぐに暖房をつけた。
「潤にぃ、そこに座って待っててね。お湯沸かすから」
そう言ってから自室でコートを脱ぎ、ハンガーにかけるとキッチンに向かった。
この時期は寒いからお湯なかなかわかないんだよねーなんて思いながらポットを見ていると
「桃、…
すごく近くに聞こえた潤兄の声に振りかえろうとすると