彼と愛のレベル上げ
いつの間にか後ろに来ていた潤兄にきつく抱きしめられていた――――


振り返る事も出来ず、何が起こっているのかと瞬きするけど、



「……潤にぃ?」



前にも一度あった。

『俺本気だから』確かその時にそんな言葉を言われた気がする。

だけど、あの時は私もジュンさんの事で動揺してたし。たぶん泣いてたから慰めのつもりで潤兄は抱きしめてくれたんだと思う。

だけど、今は?


コーヒーが飲みたいと言った潤兄。

初めて自分から家に入る意思を示した潤兄。


「……桃。」


絞り出すように吐かれた言葉は、私の名前。

どうして、そんなに切なげに私の名前を呼ぶの?


そう思った瞬間くるりと潤兄の方を向かされ、潤兄の胸に強く押し付けられた。



「ムリ、なんだよ。…桃がいなくなるなんてこと」



強く押し付けられたまま私は言葉を発する事も出来ずにいる。


「この想いを消せるなら、とっくに消してんだよ十八の時に」




十八って?

その言葉とともにその頃記憶が押し寄せる。



潤兄が大学に入ってすぐに音信不通になった。

一人暮らしになって大学生活満喫しているせいだってお母さんやおばさんが言ってた。

高校生になった私も新しい彼が出来たり、自分の高校生活に一生懸命で潤兄の存在が私の前から消えていく事に段々と違和感を感じなくなってた。

その時、潤兄は何を思って私の前からいなくなったの?


私はきつく抱きしめられている腕を解くようにして潤兄を見上げる。


「潤にぃ、それって――」






それ以上の言葉を紡ぐ事は出来なかった。

見上げた私の首の後ろを掴むとさらに上を向かせられた。




……そして私の続けようとしていた言葉を遮られた、潤兄のその唇で。



どう、して?

なんで?

潤兄は私にキスなんてするの?




混乱する頭をフル回転させるけど答えが見つからない。

塞がれたままの唇で先の言葉を紡ごうともがき口を少し開けた瞬間、





―――っ、




潤兄の熱い舌でその動きを止められた。

否、止められたわけじゃない。

さらに深く口づけられ、私のすべてを食らいつきそうなほど強く熱心にそれを絡めてくる。



その動きにただ翻弄されていく――
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