彼と愛のレベル上げ
二人きりの部屋の中。

話すなら今しか、ない。


「潤にぃ……?」


私がポツリとつぶやくと潤兄はビクッとして動きを止める。

入口の方をむいていて、振り返る事はなかった。そんな潤兄の背中に私は語りかける。


「…私ね。潤にぃのこと好きだよ?…でも、ジュンさんへの気持ちはそれとは違うの」


今、伝えないといけない。


「……ジュンさんとこの先ずっと一緒に居たいの。お母さんたちと離れる事になっても。」


それの本当の意味をわかってない。この前確かにそう言われた。

だけど、改めて考えてみてもやっぱりそれでもジュンさんと居たい気持ちの方が強い。


私の想い届いて欲しい。

潤兄に少しでも伝わって欲しい。


「私、子供の頃から潤兄に守られてばかりだった。無意識で潤兄に甘えてたんだよね?…だけど、もう大丈夫だから。潤兄から見たら、まだまだ子供かもしれないけど、でもジュンさんと一緒に頑張るから。だからっ」


自分の気持ちを伝える事に必死で、つい感極まって泣いてしまいそうで下を向いてぐっと堪える。


潤兄の事はやっぱり好きだ。

このままずっと仲良くして欲しい。

だけどきっと、それはもうムリなんだ……


「…桃。」


その声に顔を上げると目の前に潤兄がいた。

座ったままの私は潤兄を見上げるように見つめる。



潤兄は一度拳を握りしめた後、その手をすっと伸ばしてきた。

そして、その手は私の髪を撫で、頭をポンポンと優しくたたいた。


それに反応するように私は立ち上がり、潤兄に許しを乞う。


「潤にぃ。……私っ、ごめ――」


その後の言葉は続けられなかった。

潤兄の手が私の頭をそのまま自分の胸に優しく押しつけたから。




背中をポンポンと叩きながら子供をあやすようにする潤兄。

その手はうちで抱きしめられた時と違い、とても優しかった。
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