彼と愛のレベル上げ
子供の頃から、潤兄が好きだった。

かっこよくて優しくて、大好きだった。

それは今でも変わらない。


だけどいつまでもその頃の気持ちのままではいられない。

ジュンさんに対する気持ちとは違うけど、それでも大切な存在には違いない。


…潤兄と同じ気持ちになれたらよかったのに。

こんなにも私を想ってくれているって伝わってくるのに。


「……桃。最後にするから。涙、止まるまでな?」


潤兄のその声は、どこまでも優しく温かい。



潤兄の気持ちに答えられなくてごめんなさい。

私は心の中でそう思いながら……







ノック音がして、「入るわよ」と望亜奈さんの声がして扉が開かれた。

潤兄はノック音とともにパッと私の頭を胸から離すと頭に手を置いたままぐしゃぐしゃと髪をかきまわす。


「ちょ、潤にぃっ」


もともと望亜奈さんみたいにセットしてるわけじゃないけど、でもあまりにもその仕打ちはひどい。

そんな私の抗議なんて関係ないとばかりに望亜奈さんは、


「桃ちゃんさー飲むとよく泣くわよねー?」

「だなー波崎もいつも迷惑してんだな」


潤兄も意地悪な事を言いだす。

さっきまであんなに優しかったのに。


「そうよー、もうね。私はさっさとそんなの卒業するんだから」

「俺も、ノシつけてアイツに送ってやるよ」

「ふふ、そうしてやって」


望亜奈さんと潤兄は顔を見合せて笑う。


「あ、そうだっ。相良さん、携帯っ」

「あー悪い。いつ返そうかと思って困ってたんだよ」


頭をかきながら言う潤兄。

たった五日だけど、さすがにちょっと不便でしたよ、潤兄。


「大体ね。相良さん。携帯なんてなくても家電てものがあんのよ?それに私たちどこで働いてると思ってるの?」

「…だよな。俺も後で気づいた」

「やっぱ相良さん。ツメが甘いわ、……もっとこう、ね?」


大げさにため息をつく望亜奈さん。

そんな二人のやり取りを望亜奈さんの彼は見守ってるかと思いきや、


「だったらもあが、いい人紹介してあげれば?」

「あぁそうよね?うん、考えとくわ」

「いや、あの。お手柔らかに」


なんだか楽しそう。

いつの日か潤兄の隣に素敵な彼女がいてくれたら嬉しい。
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