彼と愛のレベル上げ
「初めまして純哉の祖母です」
「え?あ、あのっ、はじめましてっ天ケ瀬桃華ですっ」
突然の訪問者は近くに住んでいる主任のお婆様だった。
「ここじゃ狭いですから良かったらうちでお茶でもいかが?」
ここじゃ狭いって。
いやいや、十分広いですよ?
いつのまにかお婆様のお家にお邪魔する話は決定されていた。
お母さんって初対面の人ともすぐに打ち解けちゃうんだよね。
歩きながら話をする二人の後についていく。
なんか、不思議な感じ。
マンションを出て着いたのはさっき通ったお屋敷の前。
え?まさか、ここ?
門を入ると立派な平屋の日本家屋が現れた。
家の中は外観とは違い、和洋ミックスされたモダンな空間になっていた。
応接室に通されて、素敵なカップに淹れられたコーヒーをいただいていた。
そこに携帯が振動で着信を知らせてきた。
バックの中の携帯を取ろうかどうしようか迷っていると、
「どうぞ?」とお婆様が言ってくれたからその場で着信相手を見ると、そこに表示されていたのは主任の名前。
「…もしもし」
『モモ、今どこ?』
「えと、今はしゅ、ジュンさんのお婆様のお家に……」
『あ、ちょうど良かった。代わって?』
「あ、あのジュンさんが。代わってほしいそうです」
そう言って電話を渡すとお婆様は話し始めた。
「はいはい、わかりました。大丈夫よ、いじめたりしないから」
えと、主任お婆様に何を話してるのかな?
「それじゃあ切りますよ?え?はいはい。伝えておきます」
そう言って電話を切り、それを私に戻した。
「純哉ったら、本当に心配性ねぇ」
「え…」
「そんなに心配ならくればいいのにねぇ」
「ええ、でも先週、堂地さん。うちに挨拶に来てくださって」
「そういえば、そうでしたね」
あれ?お婆様知ってる?
「急にハウスクリーニングの日にち変えて欲しいなんて言うから、問い詰めたら今日いらっしゃるって聞いて押しかけちゃったの」
「はぁ……」
楽しそうにいうお婆様。
主任のご家族に初めて会ったのだけど、なんかすごく親しみやすいっていうか。
「うちは今日からでも住んでもらってもいいですから」
ニコニコ?
「ひ孫も早く見たいわねぇ……」
「ですわよねー。私も早く孫の顔見たくて」
ちょ、お母さんまでっ
ま、孫とかひ孫とかっ
あぁなんてこと。