彼と愛のレベル上げ
一斉にジュンさんの言葉に反応するみんな。

そしてジュンさんを見た後、こちらに振り返る。


う、見られてる。っていうかジュンさん。ここでそんな事……


「あいかわらずやる事がすごいっていうか、ね?桃ちゃん?」


小声で望亜奈さんが言うけど、きっとみんなは望亜奈さんだと思ってる。

堂々としているまさに彼女と言った感じ。そのまま騙されてくれればいいけど……


「…モモ、帰りますよ?」


ひやぁー
ジュンさん私のこと呼んじゃった。


しかも、モモだなんて。

もう、言い訳もできないっ


「「モモ?!って天ケ瀬さんっ?!」」


絶体絶命。

もう無理。

年明け怖くて事務所いけない。


その場で動けない私に望亜奈さんはコートを渡し「それじゃね?良いお年を」といってポンと肩を叩いてみんなの方へ戻っていった。


代わるようにジュンさんが隣に来ていつものように手を取って振り返り「みなさんよいお年を」と言い、もう一度私に「帰りますよ、モモ」と言った。


「あ、あの…?」


みんなにご挨拶してないし、お金も払ってない。


「きっと波崎さんがみんなの質問攻めにあってますし、モモの分は払いましたから」

「え?」

「どうせその心配をしてるのでしょう?」

「…はい」

「大丈夫ですよ、波崎さんには言ってありましたし」


いつの間に?もしかして、さっきのメールはジュンさんから?

化粧室に行こうと言われたのも、緑の小粒をくれたのも、もしかして水を飲ませたのも?

あいかわらず望亜奈さんには世話を焼かれっぱなしで。

いつか望亜奈さんの手を煩わせないようにと思いはするけどなかなか実現できていない。



店の階段を上り、外に出る。

刺すような寒さに一瞬体が縮こまる。


「一年前もモモを家まで送っていきましたね」

「…さっき私もその事を思い出してました」


だってわざわざコーヒーショップに呼びだして日の出を見に行こうって言われるなんて思ってもみなかったから。


「あの頃は朔也も一緒なら少しは気を許してくれるかと思ってたんですよ」

「気を許すも何も、十分私はその頃からジュンさんのこと……」
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