彼と愛のレベル上げ
一時間ほどお家でお話しさせていただいて、すっかり仲良くなったお母さんとお婆様。


「それでね、桃華ちゃん。」

「はい?」

「ハウスクリーニングも今まで通り週に一回してくださるっておっしゃってて」


は?

なんか世界が違うんですけど。

それに掃除ぐらい自分でちゃんとできます。


「別に今までと何も変わらないから気になさらないで?」


いやいや、気にするでしょう。

光熱費は引き落としになってるから好きに使えって主任に言われてて。

ていうか、もう私が住む事前提の話になってるし。


「いえ、そんなわけにはっ」

「あ、それだったら―――


いいこと思いついたって言う感じでお婆様が口を開く。


「月に一度お母様と一緒に家にいらして?一緒にお料理しましょう?」


お料理好きのお母さんとお婆様は私をも巻き込んで月に一度のお料理を提案してきた。

さすがに断れるわけもなく、素直に頷く。

お母さんなんて喜んじゃってもう大変。


お婆様と赤外線で連絡先を交換する。74歳って言ってたけど全然見えなくて、しかもスマホを使いこなしている。

お母さんなんてガラケーだってやっとなのにすごい。


「いつも一人だから味気なくて。食べてくれる人がいて、しかも一緒にお料理作れるなんて楽しみだわ」


私は、月に二回の朔也さんの料理教室とお婆様と一緒のお料理の日の計三回。お料理を学ぶことになった。

なんかこれって、花嫁修業みたいじゃない?


「それじゃ決まったからには早くお引越ししないとね?桃華ちゃん」


あーやっぱり決定事項ですか。


付き合い始めてたった三ヶ月の私が本当に主任の所有するマンションに住んでしまってもいいのかな?

主任に聞いても『ダメなんですか?』なんてごまかされそうだし。

ここは思い切ってお婆様に聞いてみちゃう?


「あのっ、私っ。本当にあの部屋に住んでもいいんでしょうか?」


二人は楽しそうにお料理の話をしていたから、急に私がこんなことを言い出して驚いた顔をしている。
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