彼と愛のレベル上げ
お母さんと潤兄に家を追い出された。

途中でお父さんが気がついたけど、お母さんが日の出を見に行くのよなんて言って誤魔化してくれた。

いや、本当の事だけど。

次に実家に帰るのはたぶん月末ぐらいになるんだろう。


「良かったんですかね?帰っちゃって」

「いいんじゃないですか?お母様もああ言ってくださいましたし」


そう言われても、お正月には実家で過ごすっていうのは毎年の事だったから。

それに結婚なんてしたら、旦那さんの実家に行かなければいけないだろうし……


「…うー、でも」

「モモとはキチンと話をしなくてはいけませんしね」

「キチンと?」

「この先の話しです。でもまぁ、とりあえずは去年と同じ場所に向かってもいいですか?」

「あ、はいっ」


去年一緒にジュンさんと初日の出を見た場所。

あの時は自分の気持ちが一杯一杯でどうしていいかわからなかった。

今年は全然違う気持ちでジュンさんの隣に座っている。


「一年前は、こんな風になるなんて思ってもみませんでした」

「そうですか…」



去年のことを懐かしく思う。

暗い海を見ながら夜明けなんて来なきゃずっと一緒にいられるのになんて思ってたっけ。

それが今ではこんなにも近くに居られる。

何がどうなるかわからない。

とはいえ、やっぱりジュンさんが捕まえに来てくれたから今の私たちの関係があるんだけれども。


「モモ?」

「はい?」

「モモは結婚したらすぐに子供が欲しいですか?」

「あ、の。その話なんですけど……」


正直。お母さんがその話をするまで子供の事とか考えてもみなかった。

ジュンさんと結婚する事だけ考えてた。

この先ずっとなんて言っておきながら実際の未来を考えてなかったなんて……


「先ほども言いましたが、しばらくはモモを独り占めしておきたいんですが」


ジュンさんがこう言ってくれるのは嬉しい。

でも、私の本当の気持ちも言っておかなくちゃいけない。


「あの、私、そこまで考えてなくて。正直な所、主婦としてうまくやれる自信なんてなくて。…だから、しばらくは二人の生活に慣れるまでは…って思うんですけど」


じっと前を見つめたままのジュンさん。

……ダメですか?
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