彼と愛のレベル上げ
「そろそろ、夜が明けます」
「え?あ、はい……」
私の言ったことへの答えはない。
そのまま車から出て、海岸の砂地の上を手を繋いで歩く。
「…昨年は最後かと思っていました」
「ぇ…?」
少し明るくなり始めた水平線を見ながらジュンさんは言う。
そしてきゅっと手を強く握りしめて、優しい眼差しを向けて続ける。
「来年も再来年もこうして何度でも見に来ましょう」
「はいっ」
来年も再来年も…ずっと。
わぁーっと歓声が上がり太陽が昇る。
去年とは違う。
全く新しい気持ちで見る今年初めての太陽。
日の出なんて毎日あるのに、この日だけは特別な一日。
「何年後かにはモモとの間に小さな手を繋げているといいですね?」
「はい」
「だからそのためにも三カ月頑張ってくださいね?モモ」
「はいっ!」
ジュンさんと私の未来。
そのちょっと先に家族が一人増えて、いやもしかしたら二人増えるかもしれない。
そんな未来を夢見て。
いや、夢じゃない。現実のものにするために。
*****
そのまま家に帰ってきた私たち。
まさかこんな早くに戻ってくるとは思ってないし朝ご飯の材料なんて……
すぐに着替えてリビングに行くとジュンさんが
「朝ご飯というか、お節ですが」
「あ、もちかしてお婆様のですよね?」
綺麗に詰められたこれをお婆様が一人で作ったなんてすごい。
来年は私も絶対作れるようになりたい。
「おとそ代わりに日本酒で」と言って御猪口に注がれた日本酒をいただく。
「あ、これってフルティーなんですね?」
「これなら飲めますよね?」
「はいっ、あ。でも調子に乗るとまた酔っちゃうかもしれないですよね?」
なんせ私はいつもそんな事ばかりしてる。
それに昨日は全然寝てない。
夜明け前までの時間もずっとジュンさんと話をしてた。
「いいですよ、寝ていないのですから。少し休んで午後にでもお参りに行きましょう」
微笑んで言うジュンさん。
いきなりの寝正月なんてバチがあたらない?
「いいんですか?」
「それに、モモに触れていたいですからね」
触れて……その言葉につい反応してしまう。