彼と愛のレベル上げ
ジュンさんに抱えられて寝てしまって、目が覚めたのは一時過ぎ。

お腹に回っていた手をなんとか外してそのぬくもりから抜け出す。

あぁもう午前中終わっちゃった。

ほんとに寝正月だなと苦笑する。



キッチンに行きコーヒーを淹れるとジュンさんを起こすために寝室に戻る。

さっき私が腕を解いたままの体勢で寝ているジュンさん。

ある意味器用っていうか……


「ジュンさん、そろそろ起きてください」

「ん、」


顔を近づけて声をかけるとすぐに反応をするジュンさん。

あの時間に家に来てくれたんだからきっとジュンさんも寝てなかったんだよね?

もうちょっと寝かせておいてあげたいけれど……

ぼんやりと目を開けたジュンさん。


「モモ、」


少しかすれた声で私の名を呼ぶ。

なんていうか、その声。すごく色気があるんですけど……

ちょっとそんな事を思ってしまって恥かしくて少し乱暴に言う。


「起きてください。お婆様にご挨拶に伺わないと…」

「あ?あぁ…うん、もうちょっとだけ…」


もうちょっとだけなんて普段言わない言葉にすごく萌えるけど。

いや、そうじゃなくて。

少し困っていると急に意識がパッチリ目を開いたジュンさん。


「あ、」

「起きましたか?」


ニコリ微笑んでいうとジュンさんが焦ったように「今変な事言いませんでしたか?」と聞いてきた。

変なことなんて言ってないけど、ちょっと可愛かった。

だって丁寧語じゃないジュンさんなんてあまり聞けないから。

甘えてくれてるみたいで嬉しかったから。

答えない私にジュンさんは「何か言ったんでしょうか?」と思案顔で聞く。


「いえ、…ただ朔也さんと話してるみたいな感じだったのでちょっと嬉しくなっただけです」

「嬉しい…?」


なんで?とばかりに驚いた顔をするジュンさん。


「あ、なんかちょっとジュンさんに近付けたみたいで」


ガバッと体を起こしたジュンさんが私の手首をつかみ


「モモはこの話し方は嫌ですか?」

「あの、嫌じゃないんですけど、遠いっていうか……」


上司と部下の頃からこんな感じだったから違和感はない。

だけどやっぱり恋人、ましてや結婚しようとしているのだから、なんとなくもうちょっと近くに感じたいと思っていた。
< 224 / 240 >

この作品をシェア

pagetop