彼と愛のレベル上げ
「ジュンさん、何で教えてくれなかったんですか?」
ジュンさんからの電話を取ると開口一番に質問を投げた。
もちろん何のことかわからないとは思ったんだけど
『部長から打診されましたか?』
すぐにわかったらしいジュンさん。
『なんて答えたんですか?』
「考えさせてくださいと……」
だって簡単に返事は出来ない。
引越しだってあるし、この先のジュンさんとの未来もある。
『いい機会だと思うんですよね』
「はぁ…」
『いずれは東京に住む事になるんですから、こちらの会社に勤務すれば知り合いだってできるでしょう。さすがに友達もいなくて専業主婦になったら寂しいでしょう?』
「え?」
『これだけは言っておきますが、裏で手を回したわけではないですよ?』
ジュンさんなら遣りかねないけど、本人がそう言うのなら信じよう。
さすがにジュンだって人事にまでは口出しはできないだろうから。
「…私、本社で使い物になるんでしょうか?」
『モモの頑張り次第ですが、大丈夫だと思いますよ?』
ジュンさんにそう言ってもらえると嬉しいけど不安もある。
東京での生活に慣れるんだろうか?とか
一人でやっていけるんだろうか?とか
『それに、一緒に住むんですから少しずつ慣れていけばいいですよ』
「へ?」
『まさか、一人で住むつもりですか?婚約者の家があるのに?』
実際にはまだ婚約はしてないから、婚約者って言葉に反応してしまう。
「あー…えと、一緒に住んでもいいんですか?」
『本当言ったら結婚してしまいたいところですが、いきなりそこまで環境を変えては対応するのが大変でしょう。だからしばらくは我慢しますよ、しばらくは』
“しばらくは”って二回言いましたね?
ジュンさんの言う“しばらく”とはいつまでの事かは分からないけど、
「あの。両親とも相談してみます」
『そうですね、モモのこと全面的にバックアップするのでいい返事を期待してますよ。いいかげん、こっちも待てないですからね』
「待てない?」
『ええ、我慢できなくなったら、そのうち浚いに行くかもしれないと言ったのを覚えてますか?』
確か、そんな物騒な事も言われたような気もします。