彼と愛のレベル上げ
お茶を運んで行った私を見るなりお父さんは「桃華も、座りなさい」と硬い表情のまま言う。

なんとなく空気が張り詰めてるっていうか……

私はその雰囲気に緊張したままジュンさんの隣に座る。


「堂地君、こんな娘ですが三ヶ月これでも頑張ったようだ」


たまに遊びに来ていたお母さんづてにお父さんは色々聞いていたみたい。

一応、お許しが出たってことなのかな?


「ええ、祖母も褒めてました。挨拶がきちんと出来て笑顔を絶やさないと」

「それだけしか取り柄がなくて、お恥ずかしい」


それだけはきちんとするようにと言われ続け育てられた。


《笑顔は周りを幸せにする》

《始まりも終わりもきちんとご挨拶を》


「いえ、それが一番大切なことだと言っていました。数日なら出来る事も三ヶ月となると大変ですから」


その言葉に安心したのかお父さんは私を見て少し心配そうな顔で聞く。


「桃華、少しは料理も出来るようになったのか?」

「はいっ。和食のメニューはお婆様にしっかり教えていただきましたし、イタリアンなら少しだけ。それ以外はこれから頑張りますっ」

「そうか、」


そう言ったきり下を向いて黙ってしまったお父さん。

そんなお父さんにジュンさんは、


「婚約の証を何か記すことも考えたのですが、それよりも結納と顔合わせの準備をした方がいいと思いまして。今日の所は指輪を以って婚約の証とさせていただこうと思うのですが」

「え?昨日の今日でもう指輪を用意したの?」

「…いえ、すでに渡してあったんですが」


ちらりと私を見るジュンさん。

いや、そんな高価なもの。普段して歩くなんてできませんよ?

それを目で訴えたのに、


「まぁそうなのね?素敵♪」

「堂地君、忙しいとは思うが結納の準備を進めてもらってもいいかな?」


お父さんのその言葉は事実上の結婚の許可。


「お父さんっ、ありがとう…ございますっ」

「桃華、これがゴールじゃないぞ」

「はいっ」

「桃華さんとこれからも成長できるように一緒に努力します」

「私、もっと頑張ります」


ジュンさんが隣に居てくれるから。

だからずっと頑張れる。
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