彼と愛のレベル上げ
三つ鍵の付いているキーホルダー。

そこから一つを選び出し鍵穴に入れる。



カチャ



閉め切られていた独特の重苦しい空気が私を包む。




グスン…



「なんでよ……どうして?置いてっちゃうのに、付き合おうなんて言ったのよぉ……」



ふ、ぅわーーーーーんっ



私はそのまま玄関で声をあげて泣き、涙を流し続けた。





静かな空間でしばらく泣いていたら段々と涙がおさまってきて、少しだけ冷静になって改めて靴を脱いで部屋に入る。


そのまままっすぐリビングを抜けて窓を開けベランダに出た。

夏の夜の風が一気に肌を撫でて少し不快になるけど、見上げれば綺麗な月が出ていた。


「15階から見ても、やっぱり月は遠いなぁ……」


東京の空でも同じ月見えてるのかな?




運転してたどり着いたのは主任の家。

少しずつ荷物を運んでいるとはいえ、まだ私が住める状態にはなってない。

だからここに来るのはおかしいんだけど……

でも離れている今。

会えないのなら、少しでも主任のものに囲まれた場所にいたいと思った。

だから迷わずにここに来て、たどり着いた途端泣いちゃったけど……



『ここで待っててくれる?』って言われたのに。

お婆様にも『純哉のこと見ていてくれる?』って言われたのに。

そうしようと決めたはずなのに。


ちっとも決心できてない私。



~♪



部屋の中からわずかに聞こえる携帯の着信音。


あの曲は……
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