彼と愛のレベル上げ
走ってバッグの置いてある場所まで戻り慌てて携帯を取り出す。


「はいっもしもし?」

『モモ、慌てて出なくても大丈夫ですよ?今、話しても大丈夫ですか?』

「はいっ、大丈夫ですっ」


慌てて頷きながら答えると電話口でくくくっって笑っている様子の主任。


『そんなに慌てて取って、外ですか?』


えっと、外って言うか中って言うか。


『……モモ?』

「あ、はい。あの……家です」

『今日は電話する日じゃなかったんですが……』


ちょっと言い淀んでいる感じの主任。

なんか、あった?


「あの?」

『どうしてもモモの声が聞きたくなって』


主任にそう言われて、胸がきゅーってなった。

だって私も、私も主任に会いたくて……


そこまで考えて不意に頭の中に、『思ってる事はきちんと言わないと伝わらない』そう言われた事を思い出した。

離れているからこそ、伝えなきゃいけない事。


「私も。しゅ、ジュンさんに会いたくて。おうちに来ちゃいました。」


思い切って言ったあとで流れる沈黙の時間。

え?あれ?なんか、主任にひかれた?


『……今日はそこには帰れませんよ?』

「わ、わかってますっ」


うん、さっきひとしきり泣いたからちゃんと頭では理解できてる。

主のいない部屋で寂しくなっちゃったけど、それでもちゃんと覚悟をしないといけないから。


『昨日はすみませんでした。一人で頭冷やすつもりでメールにしたんですけど』

「いえ、私の方こそ、勝手なことばかり言ってごめんなさいっ」

『モモのいとこが羨ましかったんですよ、いつでも会いに行ける距離にいる彼が……』


え?それって?


「あの、私もちゃんと説明しないのがいけなかったんです――――


それから、潤兄に主任の了解をちゃんと取るように言われた事。

伯母さんから直々に潤兄を手伝わせると言われた事。

それを順を追って説明して言った。


最初から丁寧に説明すればあんな風にならなかったのに、私が子供みたいな理由で途中で投げだしちゃったから。


『彼は、モモのこと良くわかってるんですねぇ……』

「小さいころから知ってるから、ですかね?」

『…それだけだと、いいのですが。』




主任の言ってる事の意味がよくわからないけど、それでも仲直りできたのは嬉しかった。
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