彼と愛のレベル上げ
そのあと、着替えてマンションの部屋を出たのは11時過ぎ。

主任が変なこと言うからお婆様に会うのも恥ずかしい。


「モモ、顔が赤いですけど熱でも?」


額に手を当てられて熱を計られるけど、熱じゃなくて照れてるんですって言いたいけど。


「熱は、ないみたいですね?疲れたんですかね?」


疲れましたよ!
十分疲れてます!!

ていうか、疲れてない主任はどうなんですか?


「あ、あのジュンさんは平気なんですか?」

「平気?何がですか?」


何がって。
わかっているくせにっ


「え、あのっだから、その電車で来て昨日も……」

「あぁモモのおかげで元気になりました。モモに十分充電させ――――」
「あああああ。もう、あの、わかりましたからっ」


聞くんじゃなかった。
いや、もう二度と聞かないと心に誓った。


いつものように主任に右手を握られてお婆様の家の前まできた。
主任はそのまま門の隣の小さな出入り口を開けて入り、そのまま家の中に入ろうとするんだけど……


え、あの手はまさかそのままとか…



「いらっしゃい、桃華ちゃん」


そこにお婆様がお庭から姿を現して声をかけてきた。


「あ、あの今日はお招きありがとうございます」


主任に繋がれたままの手が、なんとも居心地を悪くしている。
ただ手を繋いでいるだけなんだけど、だってお婆様の前だし。

なんていうか身内の前ってこういうのって恥ずかしくないのかな?主任は。


「中に入って、すぐに準備するわね」


そう言ってからお婆様は今度は家の中に入っていった。


「ジュンさん、あのっ、手を…」


するとその繋いでる手を一度持ち上げて私に見せてから微笑んで、


「離しませんよ?」

「え、」

「別にいいでしょう?キスしてるわけじゃないんですし、手ぐらい」


手ぐらいって。
ていうかキスなんてもってのほかですっ

大体そう言うのって人に見せるものじゃないですからっ


そしてその手をひかれたままで、家に入っていった。


玄関で一度離された手もすぐにまた捕まえられてしっかりと繋がれる。

それを見ていたお婆様が、


「純哉は本当に桃華ちゃんのこと離したくないのねぇ?」

「当たり前です。やっと捕まえたんですから」


しれっとしてお婆様にまでそんな事を言い出す主任。

だから、そういうことは人前では言わないで欲しい……
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