彼と愛のレベル上げ
後悔先に立たず――

まんまと口車に乗せられ、うっかり主任と口にしてしまった私。


……いや、昨日の事を思い出すだけでも恥ずかしい。


おかげで今日も朝寝坊。
いつまでたっても朝ご飯メニューを作ることのできない私。


「モモ、起きましたか?」

「…おはようございます。あの、また私、…」

「いいんですよ?ゆっくりしていてくれて」


その言葉だけ聞いたらかなり優しい人なんだけど。
こうなったのも全部……誰のせいだと思ってるんでしょうか。

別にそういう事が嫌って言うんじゃないけど、なんていうか……

主任は手加減ってものを知らない。

毎回こうなるのを知ってるんだから主任も学習してくれればいいのに。




私はやっと起き上がり着替えを済ませるとリビングに向かった。


コーヒーの良い香り


「お嬢様こちらへどうぞ」なんてまるで執事みたいに主任は椅子を引いて座らせてくれた。



食事を終えてもずっと機嫌のよさそうな主任。一体いつから起きてるんだろう?


「いつも何時ぐらいに起きてるんですか?」

「平日とほぼ一緒です」


え、休みの日だからってダラダラしたりしないんだ。
でも昨日寝た時間って……
私がいる事で主任の生活スタイルを乱してる?


「でも、モモと一緒だったらずっとベッドでもいいですけど?」

「いえ、あの、それは、ダメですっ。今日はいつものジュンさんを見るんですから」

「一緒に来ないと見れませんよ」と言って主任は私に仕事部屋へ来るように言った。


主任の家にいるときはリビングか寝室。だからこの部屋に入るのは初めて。
パソコンと本棚にはたくさんの難しそうな本が並ぶ。

主任はパソコンの前に座りメガネをかけたまま画面に集中し始めた。

休日モードのさらっとした髪にメガネもなかなか萌え…、ってちがうっ


昨日までのもやもやは夜にすっかり主任に溶かされて、今は蹴散らされている状態。

やっぱり主任と一緒の空間にいられるこの幸せは手放したくないと思う。


うっとりと眺めていたら急に振り返った主任が声をかけてきた。


「モモ、おいで」


素直に呼ばれた所に行くと手をひっぱられて主任の膝に座るように言われる。


「この前モモはログインしたらしいですね」


え。何で知ってる……?


「スーがわざわざメールで教えてくれましたよ」


スーラさんめ。
主任にメールしなくてもいいのに。
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