ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「特に、何もなかったよ」
「なら、いいけど。
お前、絶対に一人で行くなよって
俺の忠告をシカトするなよ」
「ゴメン。
でも、本当に何もなかったよ。
ところで、とさ、や鷲尾会長から
何か条件出されたの?」
「条件?
あったけど、それは言えない。
うちに不利になるかもしれない情報を
リークするほど俺はバカじゃないよ。
で、お前んとこにもあったのか?」
「あることはあったけど…
それはお互い様ね。
うちも言えない」
条件が秘書になれだなんて、心配しているハスキーに言えるわけがない。
ふと時計を見ると、11時を指していた。
そろそろハチが戻ってくるかもしれない。
「それじゃ」と言い出したところで、ハスキーが慌てて話を切り出した。
「ちょっと待てよ。
お前が忙しいんだったら
手短に言うけど、
わかったんだよ」
「何が?」
「大和さんの元恋人のこと。
お前、知りたがってただろ?」
ハスキーの思いがけない情報に、沙希は俄然興味をそそられた。