ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
同棲依頼、ハチが初めて語気を荒げた。
興奮が過ぎたのか、息遣いも荒くなっている。
仕事では責任感に燃えて厳しいとしても、根はのんびりしたハチのことだ。
プライベートでは些細な喧嘩もしたことがないのだろう。
しかも仕事で疲れて帰ってきているのだ。
帰るなり尋問とは、心地いいものでないことは捜査官の身でもわかっている。
これ以上は無理だと判断して、最後に直球を投げる。
「修一、 何か隠してる事ってないよね?」
ネクタイを緩めるハチの背中越しに、淡々とした口調で真意を問う。
と同時にハチの動作をチェックする。
疑った時の女の眼。
そんじょそこらのウソ発見器よりは、確実に見抜く自信はある。
特に挙動不審な動作はなかったが、ハチは嫌悪感を露わにしながら振り返ると、さらに強い語調で答えた。
「はぁ?何だそれ。
あるわけないだろ。
何で俺が疑われなきゃならないんだ。
もういいよ。
風呂入ってくる」
と吐き捨てるようにいうと、ハチはバスルームへと向かった。