ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
だが、さっきの問答をしたことには後悔はない。
言葉選びがどうだったかは別として、聴かなかったとしたら今頃どうなっていたかは想像もつかない。
きっと状況証拠だけでは、御法度の携帯まで確認していた可能性もある。
ハチの心情もわからなくはないが、今日のこの捜査が今後の抑止力にもなってくれるはずだ。
あれこれ考えが頭の中で逡巡すると、陽子からラインが入った。
《さっきは電話出れなくてゴメン。 何かあった?》
電話を掛けようとした沙希だったが、通話ボタンを押す寸前で手を止めた。
今、話したところで涙が溢れてきそうだ。
《明日、ランチ付き合って》
内容は書かず、明日のアポだけ取るようにラインを送る。今電話で話すよりも気持ちの整理がついてからのほうがいい。
とりあえず、明日のランチに陽子を誘った。
《了解!》
陽子もこちらの状況を察したのか、一言だけの返事が返ってくる。
とりあえず、相談することができると思っただけでも、少し気持ちも和らいだ。
そう落ち着いた途端、疲れもあってか沙希は深い眠りに落ちた。