ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間

陽子




12時。

フロアの面々がランチへと向かう。
沙希もすでに連絡を入れてある陽子の待つ店へと急いだ。  

「で、どうなの? 何かあったんでしょ?」  


席に着くなり、呼ばれた理由はこれでしょ?と陽子が訊く。  


「…うん。 あることはあったんだけど…」  


「もう、時間ないんだから、
もったいぶらないでよ。
攻めてきたんでしょ? 子猫」  


時間がないことを理由に、陽子は話をどんどん進めたがった。
相変わらず、相手に気を遣おうという気は毛頭なさそうだ。


仕方なく、昨日から今朝までのことを一語一句とは言わずとも会話の言葉まで順序立てて伝えると、陽子はすべて聞き終えた後で審判を下した。


「それってさぁ、
オフホワイトから
グレーになってるよ」  


「え?」  


「なってるじゃん。
だって、沙希が尋問したら
向こうからキレて話終えたんでしょ?
それってさぁ、
無くなった紙袋に飛び火しないように
って焦ったからでしょ?」  


「え?
でも、修一が紙袋持ってたことを
私が知ってるって
修一は知らないんだよ。
それはないんじゃない?」  


話を大きくしてるだけなんじゃないかと陽子にツッコミを入れる。

女子トークにはよくあることだ。
心配というよりは興味本意で相談に乗り、何とか足がかりを探そうとするあまり、逆に不安にさせてしまう。
無論、友達を想ってのことだろうが、結果、それが真実に霧をかけてしまうこともある。

分析官の彼女達に共通するのは、正義は女子で悪は男だと基本思っていることだ。
有罪だろうが無罪だろうが、一旦は容疑をかけ、犯人に仕立て上げようとする。


男は浮気をするもので、女は一途に耐えて待っているという昭和の時代から続く図式に乗っ取って推理に勤しんでいるのだ。


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