ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
やっぱり、おかしい。
どこで誰が何を?と訊くような狼狽えようは見せないまでも、無理くり平然を取り繕っているようにしか見えない。
「本当ですか?」
「だから、彼女は関係ないって。
何の関係があるって言うんだ?」
シェパードの鼻息が荒くなった。
語気を強めて、沙希を威嚇する。
役職抜きで考えても、シェパードの一喝は相手を物怖じさせるのに十分だろう。
だが、こちらとて引き下がれない事情がある。
「じゃ、今から部長のお宅に
行ってもいいですか?」
「家に?
どうして?」
シェパードの顔色が変わった。
胸が上下し、動揺している。
そして、明らかに今までの話が嘘ですと顔に書いてあるようにも見える。
「確かめたいことがあります」
「別にかまわないけど、
行ったところで何もないよ」
「それは行ったときに
自分の目で確かめます。
それに部長が軽率だったとおっしゃるなら、
担当を命ぜられた私には
調べる権利があるはずです」
沙希の頑なな態度に、根負けしたようにシェパードは渋々承諾した。
強引な感は否めないが、何とかシェパードのマンションに向かうことにはなった。
だが、強引な理由はマンションに行くためだけではない。シェパードは何かを隠している。
一連の出来事の裏に何かあるのかもしれないという疑念が沙希の胸中にはびこり始めていた。