ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間



最初こそテレビの多さに目を奪われたが、改めて見直すと生活感がまるで無いことに異様さを感じる。
雑誌もカレンダーも何もない。


子猫が掃除に来るとは言ってたし、
そもそも男の一人暮らしなんてこんなものかもしれない。


そう思っ沙希だったが、最後に一点だけ目が留まった。
ソファ脇の本棚の上に、犬のぬいぐるみが置いてある。


生活感のない部屋にぬいぐるみが一つ置いてあるのは、それこそ異様さを増している。
あり得ないが、シェパードの趣味なんだろうか?
そう思っていると、シェパードがコーヒーを持ってきた。  

「砂糖とミルクはお好みで入れてくれ」  


そう言ってコーヒーカップをテーブルに置くと、沙希とは逆側のソファに腰を下ろす。
カップを持ち上げ、一口飲んだところでシェパードが口を開く。  



「それで確かめたいことって?
何かわかったのかい?」  



「いえ、まだです。
まだ部長に何も聞いてないので」  



「ほぉ、 何を聴取されるんだ?」  



余裕綽綽の容疑者よろしく腕を組みながら、はにかんで笑う。
< 118 / 153 >

この作品をシェア

pagetop