ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
最初こそテレビの多さに目を奪われたが、改めて見直すと生活感がまるで無いことに異様さを感じる。
雑誌もカレンダーも何もない。
子猫が掃除に来るとは言ってたし、
そもそも男の一人暮らしなんてこんなものかもしれない。
そう思っ沙希だったが、最後に一点だけ目が留まった。
ソファ脇の本棚の上に、犬のぬいぐるみが置いてある。
生活感のない部屋にぬいぐるみが一つ置いてあるのは、それこそ異様さを増している。
あり得ないが、シェパードの趣味なんだろうか?
そう思っていると、シェパードがコーヒーを持ってきた。
「砂糖とミルクはお好みで入れてくれ」
そう言ってコーヒーカップをテーブルに置くと、沙希とは逆側のソファに腰を下ろす。
カップを持ち上げ、一口飲んだところでシェパードが口を開く。
「それで確かめたいことって?
何かわかったのかい?」
「いえ、まだです。
まだ部長に何も聞いてないので」
「ほぉ、 何を聴取されるんだ?」
余裕綽綽の容疑者よろしく腕を組みながら、はにかんで笑う。