ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間

コリー




会社に着くと、まだ6時半だというのに営業企画室には一角だけ電気が点いていた。
もうすでに出社している人がいるのかと思いながらドアを開けると、驚いた表情でコリーが振り返った。  



「お、おはようございます」  



「おはよう! 早いねぇ、感心、感心」  


と挨拶しながら、デスクへと向かう。
デスクへと向かいながら、いつもの習慣から沙希は錯覚する。
コリーが座っているのがコリーの席だとあたかも当然のように思う。


私のデスクはコリーの向こうだ。
が、歩くうちに歩数に反して距離が違うと感覚的にわかった。
よく見ると、暗がりの中で画面が明かりを照らしているのはコリーのデスクではなく、私のデスクではないか。


しかも、デスクの前に着くと、パソコンの画面はアプリケーションは何も起動していない。
何かを見ていたのは、間違いない。


あり得ない私の早朝出勤に驚いて、咄嗟に閉じたであろうことは明白だった。  



「何…してるの?」  



「あ、や、自分のパソコンが
ウイルスに感染したかもしれなくて
他の人のパソコンはどうかなって
それで…調べてたんです…」  



「こんな朝早くに?」  



「僕のは昨日の夜気づいたんですけど、
気になっちゃって…
少しでも早く確認しようと思って
それで…」  


目が泳いでいる。
勘弁してください、と顔に書いてあるような狼狽えようだ。


もしかして?と沙希の感がある推察を加えた。
もしかして、コリーは子猫と関わりがあるんじゃないだろうか?


それ以上訊かない沙希に、尋問が済んだと言わんばかりに自分のデスクに移ろうとするコリーに、


「あ、そう言えば」と思い出したように声を掛ける。


怯えたようにコリーの足が止まった。  



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