ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
振り返ると土佐犬は、自責の念に囚われていた。
その胸中たるや、推してしるべしだ。
良かれと思ってやったことが、結果、息子を苦しめていたのだから。
肩を落とす土佐犬に、沙希はそっと近寄り、声を掛ける。
「会長は悪くないと思います」
同情からではなく、本心から出た言葉だった。
「わしが悪かったんだよ。
すべてを伝えておけばよかったんだ」
「でも、子供を想ってのことですよね?
そこに罪はないと思います。
結果、良かったんですから
どうか、笑ってください」
沙希がそう伝えると、真っ赤に腫らした目を擦りながら、土佐犬は優しい顔で微笑んだ。
その笑顔にホッと胸を撫でおろす。
気づけば、沙希の目にも涙が滲んでいた。
「沙希さんや、
やっぱり、わしの秘書にならんか?」
土佐犬の冗談に、沙希もキッパリと笑顔で返す。
「私を独占できる男は
もう決まってますから」
土佐犬が大きく口を開けて笑う。
「そうか。 どうぞ、お幸せに、な」