ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
映画館とはさほど遠くないところに目的の店はあった。
南欧風の洒落た内装の店内に入ると、人気店らしく大半が女性客で賑わっていた。
結構待ちそうだなと思った割には、意外に待つこともなく4人が座れるテーブルが空いた。
早々に注文を済ますと、程なくして料理が運ばれてきた。
色取りも鮮やかに盛られた皿が4つテーブルに並ぶ。
パスタを口に入れた瞬間、弾けるように目を輝かせて小刻みに首を振る子猫。
益々ブリブリする彼女とは逆に沙希のテンションは落ちる一方だった。
項垂れる沙希に追い打ちを掛けるように子猫の質問が飛ぶ。
「関口さんてぇ、 家ではどんな感じなんですかぁ?」
「え~~、どうだろう。
まぁ、のんびりしてて、
ゴロゴロしてる感じかな。」
「へぇ~、のんびりなんですねぇ…意外~!
会社ではテキパキ動いて、
無駄がないって感じですよ。
周りにも結構スパルタで厳しいんですよ。
この前なんかぁ、
上にも喰ってかかったりしてましたからね。
若い男子社員の中には
怖がってる子とかもいるんですよぉ。」
なんだか癪に障る。
あなたの知らない彼を私は知ってます…的なアピール。
でもね、あなたが知ってるキビしい男は、私の前では忠実なるハチなんだけどね。
「へぇ、そうなんだ。」
「ええ、私もよく怒られたりしてます。
でもぉ、その後のフォローが
優しかったりするんですけどね!」
これって…宣戦布告してきてるのかな?
それとも、私が勘ぐり過ぎ?
シェパードと仕事関連の話で盛り上がっているハチを一瞥する。
暢気に笑ってるハチがさらにイライラ度を上昇させた。
冤罪かもしれないけど……家に帰ったら折檻決定です。