ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間



気を取り直そう。
子猫の挑発に乗って、気を乱してるようじゃ情けない。


そうだ。
この子猫から少しでもシェパードの情報を探れないだろうか。  



「まぁ、修一のことはおいといて、
部長は素敵なお兄さんですよね。
私は男兄弟がいないから、羨ましいな」  



「そんなことないですよぉ。
35歳になっても彼女すらいないんですよ。
なんだか心配になっちゃいます…」  



――ほぉ、シェパードは彼女いないんだ



「でも、絶対モテるだろうから、
心配はないんじゃない?」  



「そう!そこなんです!
いつでも彼女できるんじゃないかって…
モテるから、逆にダメで
本人も真剣にならないんだと思うんです。
この前だって、
マンションの部屋の前で女の人泣いてたしぃ…」  


そう言った後、あっと子猫が口に手をあてた。
うっかり口を滑らせて罰が悪そうにしている。
身内とはいえ、上司の失態を部下に話すことがタブーだとは自覚しているようだ。  


それはともかくとして、特定の彼女はいなくともお盛んなことには違いない。
まぁ、その辺は想定内だからね。  



「まぁ、たまたまじゃないのかな?
色恋事なんて、
ちょっとした誤解もあるでしょうからね。」  



「そうかなぁ……
でも、号泣してたんですよぉ、その人。
女の敵ですよ、お兄ちゃんはぁ。」  



「あはは、女の敵だなんて…
ちなみに、部長の部屋にはよく行くの?」  



「あぁ、週に…2回くらいですかね」  



「週に2回も?」  



「そうなんですぅ。
掃除とかぁ…洗濯とかぁ
身の回りの世話をしないと…」  



「由紀恵さんが家事をしてるの?」  



「お兄ちゃんってぇ、
ほんっとに世話が焼けるんですぅ。
仕事はデキると思うんですけどぉ~、
でも、仕事ばっかりですからね。
散らかりっぱなしだしぃ…
放っておけなくてぇ…」  



「そうなんだぁ…それこそ意外だな。」  



「だから、早く良い人ができればいいなって…
こっちの身にもなって欲しいですよぉ」  


愚痴りながらもあんまり迷惑がってはなさそうだ。
まぁ、シェパードの世話なら兄妹の関係でも苦にはならないだろう。


でも、週に2回も子猫が来るなんて…  



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