ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
駅へと向かう途中、さっきのブティックの前を通りかかった。
「あ!このコート、可愛いっ!」
先程のやむなく諦めたコートを見つけて駆け寄る子猫。
それにハチが反応する。
「それ、さっき俺らも見たんだけど…
高すぎて諦めたんだ。」
――ハチ、余計な事は言わなくていい。
思った事をすぐに口に出してしまうのはハチの悪い癖だ。
「え?高いんだぁ、そっかぁ。
でも、沙希さんも気になったんですね!
これ、可愛いですよねぇ?」
「うん。可愛いよね。」
ハチのせいで、「別に…」と生意気女優ばりに返すこともできない。
「ねぇ、お兄ちゃん、 これ誕生日に買ってよ。」
「おいおい、 そういうのは彼氏に言えよ。」
「彼氏って……
いないの知ってるじゃん。
一体、誰のせいで
私に彼氏ができないかわかってない。
これは、家事全般やってあげてる
私へのご褒美だからね。」
「わかった、わかった。」
値札も見ずにあっさりOKするシェパード。
ふとハチを見ると、シッポを丸めてシュンとしている。
同情も相まって、話題を変えてあげた。