ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間



「由紀恵さん、いつ誕生日なの?」  



「2月14日なんですぅ。
バレンタインデーが誕生日って
あり得なくないですかぁ?
誕生日なのに
プレゼントしなきゃいけないんですよぉ。
彼氏いないとあげるだけですしぃ……」  



――2月14日……私と一日違いだ。  



「2月14日って言ったら…
沙希、お前と一日違いじゃないか!」  


案の定、即反応してしまうハチ。
さっきまで落ち込んでたんじゃないの?

無邪気なだけだから冤罪だけど、やっぱり折檻決定です…  


「そうなんだぁ。
なんかぁ、他人な感じしなかったんですよねぇ。
服とかの趣味も合いそうだしぃ…」  


いえ、他人ですと言いたかった。  



「そうだよね!」


顔が引き攣ってないか心配しながら答えた。



「誕生日近いってなんか嬉しいよね。」  



「じゃぁ、今年はぁ、お互いに
素敵なプレゼントが貰えるといいですよね!」  


奥歯を噛みしめながら、「そうね」と精一杯笑ってみせた。
勝ち目のない喧嘩を買ったら、子猫を増長させるだけだからね。  


駅に着き改札を入ったところで、やっと二人とは別れることができた。
シェパードと子猫は埼京線、私達は京王線のホームへと向かう。



姿がみえなくなったところで、解放された安堵感で溜息が洩れた。  






< 33 / 153 >

この作品をシェア

pagetop