ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「由紀恵さん、いつ誕生日なの?」
「2月14日なんですぅ。
バレンタインデーが誕生日って
あり得なくないですかぁ?
誕生日なのに
プレゼントしなきゃいけないんですよぉ。
彼氏いないとあげるだけですしぃ……」
――2月14日……私と一日違いだ。
「2月14日って言ったら…
沙希、お前と一日違いじゃないか!」
案の定、即反応してしまうハチ。
さっきまで落ち込んでたんじゃないの?
無邪気なだけだから冤罪だけど、やっぱり折檻決定です…
「そうなんだぁ。
なんかぁ、他人な感じしなかったんですよねぇ。
服とかの趣味も合いそうだしぃ…」
いえ、他人ですと言いたかった。
「そうだよね!」
顔が引き攣ってないか心配しながら答えた。
「誕生日近いってなんか嬉しいよね。」
「じゃぁ、今年はぁ、お互いに
素敵なプレゼントが貰えるといいですよね!」
奥歯を噛みしめながら、「そうね」と精一杯笑ってみせた。
勝ち目のない喧嘩を買ったら、子猫を増長させるだけだからね。
駅に着き改札を入ったところで、やっと二人とは別れることができた。
シェパードと子猫は埼京線、私達は京王線のホームへと向かう。
姿がみえなくなったところで、解放された安堵感で溜息が洩れた。