ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
金曜日の散歩
会社に着き、事務の制服へと着替えるため、更衣室へと向かった。
毎日の事だが、制服に着替えるのは憂鬱だ。
年齢問わず、同じ制服を着せられる女の気持ちなんか、会社は考えたこともないだろう。
若い子はいいよ。
でも、比べられたら勝ち目はないじゃない。
ぶつけ所のない愚痴を並べながら、サッサと着替えを済ます。
長居したところで、若い子達のママゴトみたいな恋話を聞かされるだけだ。
早々に更衣室を出て廊下を進むと、総務部人事課の牛込課長が立っていた。
何が面白くないのか、それとも職種柄か、いつも眉間に皺を寄せている。
犬で言えば、そう……パグだ。
そのトレードマークの眉間の皺が今日はいつになく深い。
あろうことかパグの視線は真っ直ぐに私に向けられてるように見える。
思い過ごしかもしれないが、気持ち歩くスピードを上げた。
通路中央に立つパグの脇を抜けようと左右を確認するために顔を上げた時だった。
パグと目が合った。
間違いない。
視線は私に、だ。
嫌な予感が胸の奥でざわついた。
捉えて離さない視線には、不穏な空気が流れている。
「村上君、ちょっといいかな?」
予感的中。
出社早々、パグに連れて行かれたのは総務部長室だった。
何か問題でもなければ、一介の女子社員には無縁の部屋だ。
丁重にドアを開けるパグに続いて部屋に入ると、総務部の熊田部長が奥で待ち構えていた。