ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
門をくぐると、石畳が敷かれた通路の奥に着物を着た女性が3人立っていた。
女性達を見た途端、颯爽と歩くシェパードの足が止まった。
ん?と思ったが、後ろからで表情までは見えない。
が、シェパードはまた何事もなかったかのように歩き出した。
いびつに敷き並べられた石畳でつまづいたのかもしれない。
まぁ、特に気にもせず、また彼の後について行った。
「お待ちしておりました」
深々とお辞儀をする女性達の中で 一人だけ違う派手な色合いの着物を纏った女性が挨拶をした。
女将なのだろうか?
女将にしては年齢は明らかに若い。
だが、落ち着いた振る舞いと優しく包み込むような眼差しが凛としていて、風格を漂わせている和服の似合う美人だ。
艶やかな濃紺に桜吹雪が舞っている着物も実に品よく着こなしている。
「鷲尾様はすでにお越しになられてます」
それだけ告げると、女将らしき女性は私達二人を奥の間へと先導していった。
中庭には綺麗に手入れされた松と池がライトアップされている。
猪脅しが響き、さっきまでの都会の喧騒が嘘のような別世界を醸し出していた。
呆気に取られていると、先導していた女将が奥の襖の前で足を止め膝をついた。
ようやく部屋に着いたようだ。