ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「お互いに社での打ち合わせもありますから、
返答は後日でもいいでしょうか?」
まだ条件面の詳細すら確認してないのだ。
安易にどちらかが了承すれば、もう片方も全てを受けざるを得ない。
配慮の利いた先手の打ち方だと思えた。
「まぁ、よかろう。」
への字口の土佐犬がシェパードに体を摺り寄せる。
「だが、返答次第では今後の付き合い方も考えるぞ」
睨みをきかせながら、土佐犬は立ち上がり襖を開けた。
「話はそれだけだ。
見送りはいらんからな。
その代わり、
金曜日にここで良い返事を聞かせてくれ。」
そう最後に釘を刺す土佐犬。
即決ができずに納得できないのか、ピシャッと音を立てて襖が閉まった。
残された4人はしばし呆気に取られていたが、亀井が口を開いた。
「鷲尾会長は相変わらずですなぁ。
で、どうされます?」
「うちは社で揉んでみますよ。
お宅もここじゃ決断できないでしょう?」
「まぁ、そうなりますかな。
ところで、今日はお一人ではなかったんですか?」
「ええ。 挨拶がてら連れてきました。
これから担当にさせようと思いましてね。」
「彼女を?」
亀井が好奇の目で沙希を見た。
「鷲尾会長の…担当にですか?」
なんだかバカにしてるような口調が癪に障る。