ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
会社に着き、デスクへと向かうと何やら周囲がざわついていた。
腕組みしているコリーに沙希が訊く。
「どうしたの?」
「あ、村上さん、おはようございます。
あ、や、 部長が早く出社してるじゃないですかぁ。
こういうときって、何かあるんですよねぇ」
訝るコリーの返事を聞いて、シェパードのデスクに目を移す。
そこには難しい顔をしたシェパードがパソコンを睨んでいた。
振り返った沙希に、コリーが心配そうに訊いてきた。
「昨日、接待でしたよね?
何かありました?」
不意に訊かれ、咄嗟に頭に浮かんだのはバーでのシェパードだったが、記憶をさらに巻き戻すと土佐犬のふてぶてしい笑顔がフラッシュバックした。
「あ、そういえば…」
土佐犬の横暴な命令も順を追って思い出す。
「バレンタインの企画のことで
先方から依頼があって…」
「ほら!やっぱりだ。
この時期の鷲尾会長の呼び出しだから、
絶対何かあると思ったんですよ。
ああ~、もう」
沙希の返答にコリーがすぐさま反応した。
頭を抱え、下唇を噛んでいる。
それもそのはずだ。
この時期にプランを1から練り直すって並大抵の作業じゃ済まない。
とそこで、愚痴っている輪を知ってか知らずかシェパードがフロア全体に声を掛けた。