ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「全員、集まっているか?
ちょっと聞いてほしいんだが、
BD商戦のプランが練り直しになった。
10時から緊急ミーティングを開くから、
名前を呼ばれた者は会議室に来てくれ」
そう言って会議参加メンバーを告げると、シェパードは書類を持って急ぎ足でフロアを出て行った。
各部への擦り合わせもあるのだろう。
シェパードが退室した後、コリーがすかさず知った風な口をきく。
「鷲尾会長の頼みとなると、
うちは断れないですからねぇ」
「何で?」
「村上さん、知らないんですか?」
コリーは一瞬驚いた様子だったが、沙希が元総務部ということを思い出したのか淡々と説明を始めた。
「うちが創業当時、
まだ経営が波に乗ってない時の事ですけど、
人気商品が品切れになって、
商品の調達にてんやわんやになってる時に
助けてくれたのが鷲尾会長なんですよ。
うちに優先的にまわしてくれて…
それでうちは業績が上がったし、
社名も認知されるようになった。
だから、その時の恩で、
鷲尾会長には頭が上がらないんです」
「へぇ~、そういう経緯があったんだ。
あの会長はうちにとっては恩人ってわけね」
「あ~あ、順調に進んでたのになぁ。
これでまた、何日か徹夜になっちゃうなぁ…」
とコリーは残念がりながら、また頭を抱えた。
若いし、その辺の我慢は利かないんだろう。
からかい半分で沙希が訊いた。
「仕事漬けになったら、
彼女に愛想つかされちゃうんじゃないの?」