ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「彼女なんて、いませんよぉ。
仕事オンリーで夜遅い時もあるし…
出会う時間も場もないです…
あ、でも、今はいいなって思ってる子と
いい感じにはなってきてるんですけどね」
女っ気がないというのも気が引けたのか、コリーは否定しながらも言い訳染みたセリフを付け足した。
「この」
と言いかけてから、気を遣って沙希は小声に変えて訊いた。
「部署の子?」
「いえいえいえ」
コリーはぶるんぶるんと頭を振ると
「違う会社の人です。
最初は一方的な片思いだったんですけど、
最近、向こうからも
連絡くれるようになったんですよ」
口角の両端を吊り上げて、コリーは電話で話すポーズを取って見せた。
「いいなぁ。
そういう時期が一番楽しいかもね」
「そんなことないです。
あ、村上さんは彼氏いるんですよね?」
「一応…ね」
無邪気だが土足で踏み込むコリーに、あえて素っ気なく答えた。
「付き合いが長いから、
トキメキ?
ワクワク感ってのは減ってきてるけどね」
「どれくらい付き合ってるんですか?」
「う~ん、1年くらいかな」
「じゃあ、まだラブラブじゃないですかぁ。
いいなぁ。
村上さんみたいな綺麗な人と恋人なんて、
彼氏さん、羨ましいです」
社交辞令のような賛辞を言うコリーに
「
何も出ないよ」
と沙希は軽くあしらった。
が、男子とはいえ若きコリーは興味が尽きない。
「結婚とかも考えてるんですか?」
「ないない。
結婚とかはまだ考えてない」
可愛いコリーの若気の至りとはいえ、いきなり抱きついて顔を舐められるのは敬遠したい。
これ以上、プライベートを訊くなと言わんばかりに、じゃれ合うコリーに逆に気になってた事を振った。
「ところで、
この部署って結構静かだよね。
社内恋愛は禁止だから、
恋話はしないだろうけど
私語も禁止なの?」