ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「そんなことないですけどね。
暗黙の了解ですけど、
付き合ってる人もいるし…
でも、ある事があってから、
フロアでは恋愛話はご法度なんです」
「ある事?」
沙希の質問にコリーは口を滑らせたかのように目を見開いてフリーズしている。
「ひょっとして、部長が絡んでる?」
図星だろう。
コリーの表情がさらに曇った。
主人に怒られた時の犬のようにシッポを丸めて俯くコリー。
さらに突っ込んで訊きたい沙希だったが、
「これ以上は話せません。
何かあったっていうことも
僕から聞いたということは
内緒にしておいてください」
可愛いコリーが頭を下げるので、沙希も心情を察して、それ以上は訊くことはしなかった。
が、この部署でシェパード絡みで何かあったことは間違いない。
そういえばと昨日の夜を思い出すと、シェパードも口を濁していた。
自分のせいで部の雰囲気が悪いと自覚しながらもその詳細については語ることはなかった。
――一体、何があったんだろう?
コリーの反応を見る限りでは、ただ事ではなさそうだ。
とはいえ、真相がはっきりしない以上は、こちらがいくら詮索してもそれは無駄な作業でしかない。
とりあえず、緊急ミーティングの会議室へと向かった。