ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
会議の内容は淡々としたものだった。
コリーの言う通り、土佐犬の依頼は受けざるを得ない。
他部署の部長も参加していたが、皆一同に首を縦に振った。
ただ扱う商品と条件が問題だった。
商品はダイエットサプリで、別段問題はないのだが、扱う時期が外れている。
年中売っている商品ではあるが、売り文句が消費者を刺激するのは水着になる夏の前で、メインは4月から6月だ。
厚着するこの時期に無理して痩せようとは誰も思わない。 ということは絶大な効果は元より、戦略とキャッチコピーが販売の結果を左右する。
あとは条件面だが、返品なしの翌月払いということだった。
通常は手形で3か月後に支払となっているが、この商品に限っては翌月に支払という条件になっている。
「返品も利かず、翌月支払なんて…
そんな売り逃げみたいなやり方……」
「商品は大丈夫なんでしょうかね」
依頼は受けるにしても、条件面には各々文句が飛び交った。
次第に鷲尾産業を不安視する声もあがる。
先方に対して、恩義を感じているんじゃなかったのか
「こんな条件なんて…
鷲尾産業は 本当にヤバいんじゃないですか?」
「資金繰りに苦労してるのかもしれんな」
別問題にまで飛び火して参加メンバーがざわつき始めたのを見て、静観していたシェパードが口を開いた。
「じゃ、受けないということですか?」
この一言で一同は沈黙する。
問題があろうがなかろうが、今後の取引を考えると受けざるを得ない。
しかも、うちには借りがあるのだ。
議論の焦点は受ける受けないではなく、いかに売りさばくことのみだ。