ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「勝算はあるかね?」
営業部の部長がシェパードに問いかける。
「企画次第だが、
必ずしも売れなくはないと考えます」
シェパードは自信満々に、そして慎重に言い放った。
彼の中で算段はあるのだろう。
今までもこういった状況の中で実績を出してきたに違いない。
シェパードの一言で企画部の案に一任することになり、重苦しい会議は幕を閉じた。
資料をまとめて会議室を出ようとすると、営業部長がシェパードとすれ違いざまに耳打ちしようと顔を近づける。
何の内緒話かと、沙希は資料をまとめて聞こえてないフリをしながら、聞き耳を立てた。
「大和、お前…
私情が絡んで意地を張ってる
…ってわけじゃないだろうな?」
「まさか。
ちゃんとビジネスとして捉えてますよ」
「ならいいが、頼んだぞ。
鷲尾のゴリ押しに乗るのは今回が最後だからな」
とシェパードに釘を刺して、営業部長は会議室を後にした。
「さあ、これから忙しくなるぞ」
シェパードは企画部のメンバーに声を掛けると颯爽と会議室を出ていく。
二人の会話に気を取られていて書類もまとめ切れてなかったが、沙希とコリーも慌ててシェパードの後を追いかけて行った。